本当のこのコーナーの目的は友人を出す事ではなく、もっとプレーンでREALな人を紹介する事にある。それはたとえばなんの変哲も無い主婦の話であるとか…。しかし私は主婦となかなか知り合う機会が無い。誰か私に主婦を紹介してください。 そして今回のデプスもまた身内になってしまった。
DEPTH04で登場したアムちゃんを、あなたは覚えているだろうか?彼女達は今年4月に、本当になんの躊躇もなく北海道に行ってしまった。それは笑ってしまうぐらいのスピードだった。実は私は、数日前まで彼らの北海道の家に滞在させてもらって戻ってきたばかりなのだ。

そこでの彼らの暮らしぶりは私の目にはとても素晴らしく映った。しかしその素晴らしさは、私の言葉で説明するのはあまりに難しい。そこで今回はカトキチに東京を離れて4ケ月間の出来事や思いを語ってもらいたいと思う。北海道で見たカトキチは実際にただのカトキチだった。
彼はどこで何をしてても彼でしかない。つまり彼は彼で完結している。そういう人は非常に希だと思う。
まず最初に北海道に上陸した時のエピソードを聞かせてもらおう。
ちなみに少々年期の入った車で突撃した北海道の4月はまだ相当雪が残っていた。

向こうみずだよね、雪の北海道にいきなり突撃だもんね。埋まったでしょ?

「うん、家に着く50m前で(笑) ちょうど大家さんがここの水道直しにきてて、引っ張ってもらって。」

初日は電気もストーブもなかったんだよね?

「引っ越し荷物が届いてなかったから…。さすがに大家さんには心配されて、家に来いって言われたけど
断って…」

なんで断ったの?

「いや、なんかそれもおもしろいかな?と思って」

「おもしろい」?
雪国の人にとっては「雪、寒さ」と「おもしろい」はたぶん永遠にむすびつかない組み合わせであろう。
彼らの富良野上陸の初日は暖房も電気も無い部屋で、夜の北海道を味わう事にしたそうだ。
よく死ななかったものだ。

「全然、平気だったよ。ダウン着て寝たら汗をかいて起きたぐらいだった。」
でその後しばらく何をしてたの?
「犬の散歩とかだね(笑)
でもその犬の散歩もこっちは犬を散歩させる習慣もなくて、かなり変な目で見られてたらしい。ただの犬に散歩させているだけでも珍しいのに、犬1匹に2人がかりで散歩だからね。いつだったか、近くの農家の人に「そんな犬×××××」って言われて「×××××」の部分が分からなくて、もしかして「殺せ!」って言っていたのかなぁ?それはあまりに酷いなぁと思って、言った本人に聞いて見たら「そんな犬放っておけ!」って言っていたんだって。」

でも、ずいぶんゆるい1日のスケジュールだね(笑)
「うん。 実際は雪で何もできなかったという感じなんだけどね、周りは何もなくて真っ白だと、白い砂漠みたいでそれはそれで楽しかったよ。アムちゃんと1ケ月間、家に篭もって景色ながめて、本よんだり、これからの計画を練ったりして4月はすごした」

たしかにそこは自販機のひとつも無い地域だった。隣り街のスーパーまででさえ車で10分以上はかかる。歩いて30秒でコンビニがあった東京。24時間いつでも物が買える東京。冬でも雪で家に閉じこめられない東京。そしてその便利さを存分に謳歌していた彼らが、そのような場所にいきなり住む事に戸惑いはなかったのだろうか?

「戸惑いというか、なんか体が浮いた感じで現実感がなかった。アムちゃんなんかは最初から全開だったけどね。まぁプリンを売って生活する事も数年前では全く想像できなかったわけだけど。考えてみれば俺の人生、相当現実感無いよ(笑)いい意味で。」

んで慣れたの?

「うん。そこで俺の結論は「人は割と慣れる!」っていう(笑)」

実際私も初日は、あまりに東京と対照的なその場所に平静を装いつつも戸惑い、100%楽しむ事がなかなかできないでいたのだが、彼らの生活リズムに合わせ、豊かな自然に囲まているというその現実に一度完全に身をゆだねてしまうと、何も無いという事は全く気にならないどころか、逆に何も無いから良いのだ。いや、あって欲しくない!、私にとってすべての必要なものはもう既にここにある!!、と感じ始めるから不思議である。
しかしそんな中でも彼らは5月には動き出す。まず彼らが始めたのはプリンを作る製造所(プリン小屋)を制作する事だった。入居当初からいろいろめぼしをつけていたらしいのだが、結局その場所は自宅である借家からさらに丘を登った小高い場所に決まった。その経緯は?
「いや、周りの農家の人は一斉に働き出すんだよね、5月は。

そんな中で何もしないでブラブラしているのも何か申し訳ない感じもした、そんでまず製造所作る場所探しからはじめた。」
「最初は自宅からちょっと離れた場所にある丘の上の納屋を改造して製造所にしようと考えてたんだけど、オヤジ(大工)にその納屋の写真を送ったら、無理だって言われて…。だけどちょうどその隣りに家のコンクリの基礎がそのまま残っていたから、それを使う事にした。材料も結局、新しい木を使うのにどうしても抵抗があったので(木を切り倒す行為と同じだから)、自宅の隣りの納屋を解体してそこから主な材料は流用した。
納屋を分解する際にオヤジがいつも言っていたのは、その納屋の造りの素晴らしさなんだよね。こんな土地の納屋にもけして手を抜かなかった昔の大工っていうのは凄いよね。結局オヤジにみっちり1月間手伝ってもらって今だいたいは完成している。」

「そこで俺の結論は「家も割と簡単じゃん!」っていう(笑)」

たぶんこれを読んだ人は、彼らの制作した製造所を、バラックの様な吹けば飛ぶような物を想像したかもしれない。しかしこの目でそれを見た私から言わせてもらえば、その作りはかなり本格的かつユニークでかっこいい。

「でも村の人は誰も良いって言ってくれないんだよねぇ、あの外見(笑)」

地元の人とは交流はあるの?
「家どうしは離れているけど、結構あるよ。自分とはまるで違う環境で暮らしてきた人達だけど、話してみても不思議と違和感は無い。」

彼の移住した所は、北海道の中でも特に歴史の浅いところであり、その分しがらみが無い。
私の主観だが、自然が厳しい所では人は人にやさしい。
たぶん助け合わなければ生きられないからであろう。
彼らは村の人には「ちょっと変わった都会の人」と思われている事は事実であろう。しかしお互いそれを承知している関係は非常に風通しが良いものだ。

冬とか何すんの?
「冬は実はプリンが非常に売れる時期なんだ。だからプリンは忙しくなりそうなんだけど、吹雪とかシャレになんないらしいから、そんな時は仕事を休んで家に篭もるしかないね。その時間でDAUとかやったりね、外は吹雪の中で音楽を作る。そう考えると冬もかなり楽しみだよ。早く冬になんないかな?」

「早く冬になんないかな?」この言葉はけして地元の人の前でしゃべってはいけない言葉の1つだ。
DAUとは彼がここ10年以上に渡って仲間と毎週2回、誰に頼まれもしないのにコツコツと活動をしてきた音楽グループである。

もはや彼らの生活と同化したその活動はおならのようであり、最終的におならで終わるのかと思いきや、この秋にデビュー(インディーズ)する事が正式に決まった。そして今回DAUにフユーチャリングされるのが、これまたDEPTHであなじみのロボ宙なのである。

「そうそう、おならに合わせてラップしたのがロボ宙(笑)彼はたぶんおならのビートに合わせてラップした
史上初のラッパーだと思う(笑)」


それがどんな音なのかは、このサイトでも購入できるようにするつもりなので、
そこで買って聞いて欲しいが、その音についてのエピソードとして、数年前にメンバーの一人が会社の同僚に聞かせたところ「素敵なハワイアンですね!」と言われたらしい。悲しい事にその一般的な感想は全くの的外れでは無い…。

話は戻ってアムプリンのこれからは?
「9月から営業開始するつもり。その営業を軌道に乗せることかな。あと今は借家なんだけど、北海道に来た目的は、プリンを売りつつ家を自分達で建てるという物だったから、とりあえず早くそこに行きたい。今はただただそこを目指す!。その先はそれからだな。」

「来年には営業も軌道に載る予定だから、何か祭りを開催したいね。地元の人に還元できるような」
彼らの旅はまだ始まったばかりである。

先日、日本では人気絶頂だった有名なサッカー選手が最後に「人生は旅であり、旅とは人生である」という言葉を残して引退をした。そしてその青臭い言葉を一部の日本人は嘲笑したに違いない。
しかし私は彼の言葉の意味を実感できる。
なぜなら彼らと過ごす時間は、たとえそれがただの日常であっても、決まって共に旅をしているような感覚になる。
毎日、少しづつ変わった出来事、問題にでくわす。それを皆で知恵を出し合って解決し楽しむ。
まさにその感覚は旅なのだ。

その事についてはお互い話した事は無いのだが、カトキチもたぶん同じ事を感じていたに違いない。
なぜなら、私は彼がこんな言葉を言っているのを、遠くから微かに聞いたからだ。
「なんか一緒に居ると旅してるみたいだね」
「人生は旅であり、旅とは人生である」
確かに青臭いがそんな人生観も素晴らしい。そして私はその言葉に同意しよう。